ひつじん
3兄弟のパパとして育児と資産運用をたのしんでいるひつじん(@hitujin03)です。
今回は固定資産税のお話しです。
戸建て住宅を新築したり、マンションを購入して夢のマイホームを手に入れた方は、契約時のローンの金額が数千万円と高額なためどうしても入居後に発生するランニングコストである「税金」、つまり「固定資産税」まで目が届かないのが現実です。
市役所や区役所から届く通知(納税通知書)に、「まあこんなものかな」と深く考えずに払い続けている方が圧倒的に多いはずです…。
しかし、近年、固定資産税の課税誤り(課税ミス)が全国的に問題視されており、テレビや雑誌で取り上げられ、実際に納める額よりも余分に払って被害を被っていた事例が頻発しています。
実際に、総務省がH21年度からH23年度における固定資産税と都市計画税の課税誤り等による税額修正の状況について調査を行いました。
参考 固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果総務省
その結果…
- 課税誤りがあった市区町村の数→1,592団体のうち97%の1,544団体
※団体数割合 = 税額修正団体数 / 調査回答団体数
ほぼすべての市区町村で課税ミスが発生…。
しかも、中には20年以上も気づかないまま1,000万円以上も過払いしていたという事例もあります…。
とても怖いですよね(-_-;)
あなたが支払っている固定資産税は大丈夫でしょうか?
ちなみにわたしは、住宅メーカー勤務時代に約3,000棟のお客さんの固定資産税の評価を見てきました(当時、友人が市役所で固定資産の家屋評価担当をしており、評価の手法はレクチャーを受けました)。
そして、自宅を新築した際は、市役所の窓口で固定資産税の評価について資料を基に説明を受け、誤りがなく税金を払い過ぎていないことを確認できたため納得して毎年納税しています。
(大規模な市役所ではないこともあり、基準よりも低い評価(税金上の評価が低い=税金が安い)を採用してくれている項目があることも確認済み(^^♪)
なぜ課税ミスが起こるのか?
固定資産税の課税の仕組み
固定資産税(土地・家屋)は、土地と家屋が所在する市区町村が税金を課税し、毎年1月1日現在の所有者がその翌年度に税金を納めます。
- 例えば、2019.10.1に戸建て住宅を購入し入居(土地も購入)したケースだと
2020.1.1に土地と家屋の所有者となっていますから、2020年度(2020.4~2021.3)から固定資産税を支払う義務が生じます。
→市区町村の固定資産課税台帳に所有者として記載されます。
固定資産の所有者に税金を課税しますが、課税するためには対象となる土地と家屋について固定資産税上の評価をする必要があります。
土地は大昔から存在しており既に評価されていることが大半ですが、家屋は毎年新しく建築されています(増築や改築もあります)。
新築の戸建て住宅が建築された場合、固定資産税を課税するために市区町村の担当者が家屋の調査に訪れます。
(分譲・賃貸マンションは販売会社や所有者等が図面や見積書等評価に必要な書類を市区町村の担当者へ渡しており、入居者等が訪問調査を受けることは基本的にありません)
そうして固定資産税を課税する評価額が決まり、その評価額を基に課税標準額(固定資産税上の税金の基礎額)が決まります。
- 固定資産税の計算方法
固定資産税 = 課税標準額 × 標準税率(1.4%)
※評価額に特例措置を加味し課税標準額を算出
なお、評価の基準は総務省が定めた「固定資産評価基準」という統一ルールがあり、これに沿って市区町村の担当職員が評価額を計算しています。
ひつじん
固定資産税の評価・課税は人為的なミスが起きやすい状況にある
市区町村で固定資産税を担当している部署は、一般的に固定資産税課や資産税課、税務課の名称であることが多いです。
もちろん、固定資産の評価をして税金をかける担当者は公務員です。
そして、公務員である市区町村職員の人事異動は2~3年が一般的。
このため
- 2012年~2014年は市民課(住民票や戸籍の業務)
- 2015年~2017年は固定資産税課(固定資産税の業務)
- 2018年~2020年は保険年金課(国民健康保険の業務)
といった具合で異動します。
じつは、この人事異動が課税ミスの根源で、市役所の仕事は税金、国民保険、障害保険、公園や体育館などの公共施設の維持管理、水道・下水道、道路などのインフラ維持管理、地域振興、産業振興など多岐にわたります。
それぞれの業務に関わる法律も、税金であれば地方税法や所得税法、国民保健であれば国民健康保険法といった具合にまったく異なります。
つまり、人事異動の度に転職して別の会社で働くと言ってもいいくらい業務内容が異なるのです。
そして、この中でも税金は特に専門性が高く、国の基準でルールが決まっているとはいえ、家屋であれば建築物の構造や使われる資材などの知識に加え、膨大な評価基準を正確に理解し、正しく評価するスキルが求められます。
(建築士の資格を持ち、現場での大工等の施工経験があり、その上で市区町村での固定資産税を担当すれば家屋の評価には困りませんが、そんな市区町村の職員はいませんよね…)
ひつじん
このため、固定資産税の仕事をまったくしたことのない人が担当者になることも珍しくありませんし、特に配属1~2年目の職員は特に習熟度が低く必然的にミスが起きやすい状況であるといえます。
加えて、総務省が2040年問題から各自治体の職員数を減らすよう働きかけており、自治体の財源として大部分を占める固定資産税の部署でも人が減り、ますますミスを誘発しやすい環境が出来上がりつつあるということです。
また、地方税法上、市区町村には次のように毎年固定資産台帳に載っている土地と家屋の課税状態が正しいか調べる義務が明記してあります。
(固定資産の実地調査)
第四百八条 市町村長は、固定資産評価員又は固定資産評価補助員※に当該市町村所在の固定資産の状況を毎年少くとも一回実地に調査させなければならない。
※固定資産評価補助員=市区町村の担当職員
ただし、法律の解釈としては外観調査(外から変化がないか確かめる調査)で事足りるとされており、市区町村の担当者がミスに気づきにくい制度になっています。
つまり、屋根だと「スレート屋根」を「瓦屋根」と誤った評価をしていた場合は外観で気づく可能性があります。
一方で、リビングの壁紙が「クロス貼り」なのに「タイル貼り」だったり、「床暖房がない」家なのに「床暖房あり」と誤った評価をされていても家の中を確認するわけではないため、ミスが訂正されず放置されてしまうといった具合です。
ひつじん
課税ミスの起こりやすい事例
冒頭でお話しした、「総務省の固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果」によると、税額を修正した内訳はつぎのとおりです。
- 土地
◆増額修正 32.0%(税金が増える)
◆減額修正 68.0%(税金が減る) - 家屋
◆増額修正 40.5%(税金が増える)
◆減額修正 59.5%(税金が減る)
さらに、税額修正の要因別の内訳はつぎのとおりです。
土地・家屋とも減額修正が多いということは、課税ミスで固定資産税を払いすぎている人が多いということ、そして、課税ミスの一番大きな原因は評価額の修正であることから評価の内容が間違っていることが多いと分かります。
課税ミスについて、土地と家屋で抑えるポイントが異なりますので、この点を確認しましょう。
土地の課税ミス
土地ではつぎの3点
- 現況地目はあっているか(宅地、田、畑など使用実態の種類)
- 補正項目は正しいか(がけ地、間口、接道など)
- 住宅用地の軽減特例が適用されているか
特に多いのが3の「住宅用地の軽減特例が適用されているか」についてで、税額に与える影響が大きいため、この点を解説しますね。
固定資産税・都市計画税では、住宅用地には下記のような軽減特例が設けられています。
- 固定資産税の軽減
200㎡以下の部分(小規模住宅用地)
→ 課税標準の6分の1に軽減
200㎡超の部分(一般住宅用地)
→ 課税標準の3分の1に軽減 - 都市計画税の軽減
200㎡以下の部分(小規模住宅用地)
→ 課税標準の3分の1に軽減
200㎡超の部分(一般住宅用地)
→ 課税標準の3分の2に軽減
※課税標準とは、税金をかける基準となる金額(その土地の固定資産税上の評価額)
※税率は一般的な政令指定都市のものを表記(人口の少ない市町村は都市計画税がなかったり、税率が0.2%だったりと、大規模な市よりも条件が良い傾向にあります)
軽減措置の内容を確認しましたから、具体的に所有している土地の評価額が600万円と仮定して計算してみると
- 【軽減適用あり】
600万円×1/6=100万円(課税標準)
100万円×1.4%(税率)=1.4万円(固定資産税の額) - 【軽減適用なし】
600万円(評価額=課税標準)
600万円×1.4%(税率)=8.4万円(固定資産税の額)
その差は7万円!!
1/6の影響は大きいですよね。
もし仮に35年ローンで土地・家屋を取得し、ローン完済までこの特例が適用されていないことに気づかなかったら、35年×7万円=245万円も税金を払いすぎることになります!
影響が大きいため、市区町村の担当者も細心の注意を払い事務をこなしていますが、冒頭の総務省の調査結果のとおり、ミスが発生しているのが現状です。
そして、土地の課税に関しては、評価内容のミスに次いで多いのがこの住宅用地の軽減特例の適用ミスです。
徳島市では、建物や土地の課税額を調べる職員の連絡ミスや確認ミスなどが主な原因による住宅用地の特例適用漏れ等で、2012年~2016年で合計228件2億532万円を多く徴収していたことが判明しています。
家屋の課税ミス
家屋ではまず最初につぎの3点を確認しましょう!
- 評価額が正しく計算されているか(評価内容は適切か)
- 家屋を滅失(取り壊し)した場合は反映されているか
- 増築・減築等(床面積の増減)は反映されているか
さきほど、市区町村は地方税法で毎年、固定資産台帳に載っている土地と家屋の課税状態が正しいか調べる義務が明記してあることを確認しました。
にもかかわらず、2の「家屋を滅失(取り壊し)した場合の未反映」による税額の修正が高い頻度(修正のうち23%)で起こっています。
そして、特に多いのが1の「評価額が正しく計算されているか(評価内容は適切か)」についてですが、これは評価の内容が正しいかというものです。
評価の内容が適切でなく誤っていれば、そこから導かれる評価額も正しく計算されているとは言えません。
ひつじん
家屋評価の仕組み
簡単に説明すると、家屋は使われている材料(構造の部材)により点数が決められており、家屋の部分ごと(屋根や天井、床など)に使用している材料に該当する点数を積み上げ、その合計に床面積を乗じ評価額を算出します(実際には再建築価格や経年減点補正率など様々な要素がありますが計算式が複雑なため説明は省きます)。
家屋の部分はつぎのような「屋根」「天井」「外壁」といった内容になります。
そして、一般的な住宅である木造家屋の「屋根」で点数例を示すとつぎのような内容になります。
一般的な瓦の屋根であれば、瓦「中」となり、採用する点数は「14,890」となります。
家屋全体の点数が100,000点とすると、床面積が120㎡であれば、評価額は12,000,000円(10万点×120㎡)。
固定資産税の税率は1.4%なため、税額は168,000円(1,200万円×1.4%)となります。
また、家屋の所在する自治体により異なりますが、上記のケースだと都市計画税として36,000円(1,200万円×0.3%)も加わるため、トータルで204,000円が固定資産税・都市計画税として納税通知書に記載され支払う金額となりますね。
なお、実際には固定資産税について新築家屋の減額措置が適用される(新築後3年or5年)ため、84,000円(1,200万円×1.4%×1/2)となり、トータルの固定資産税・都市計画税は120,000円(8.4万円+3.6万円)となります。
話を少し戻しますが、上記の木造家屋だと「屋根」の項目で13種類(さらに加算項目の天窓は2種類あり)も点数が分かれていて、細かさがお分かりいただけたと思います。
そして、天井、床、建具(窓、扉、ふすま等)、建築設備(ユニットバス、給湯器、システムキッチン、トイレ等)なども屋根以上に細分化された点数で構成されています…。
(別記事にしたいと思いますが、賃貸マンションやアパートをお持ちの方は特に建築設備(特にガス設備)については注意が必要です。リースだと家屋評価から除かれます→リース会社の償却資産として申告すべきものです)
また、各項目について、形状、種類、長さ、広さ、容量など様々な補正項目も存在。
ここまでみてくると、評価の対象となる家屋に使用されている資材に対応する「評価の点数」及び「補正項目」を正しく選ぶ行為の難しさが何となく伝わったのではないでしょうか。
ひつじん
つづいて、課税ミスの確認方法をお伝えしますね!
課税ミスがないか確かめよう!
土地と家屋で課税ミスが起きやすい点を確認しましたので、ここでは実際に確認する方法と手段をお伝えしますね。
まずは納税通知書と課税明細書の記載内容を確認
毎年、4月10日前後に土地と家屋が所在している市区町村から納税通知書(市区町村ごとに様式は異なる)が届きます。
まずは、届いた「納税通知書」を開封し、同封されている「課税明細書」を見て、先ほどお伝えした土地と家屋の確認ポイントをみていきましょう。
- 納税通知書
→納める税金の額、納める時期等が記載 - 課税明細書
→税金の対象となる土地・家屋の物件ごとの情報(所在地、家屋番号、面積、評価額、課税標準額)が記載
土地ではつぎの3点
- 現況地目はあっているか(宅地、田、畑など使用実態の種類)
- 補正項目は正しいか(がけ地、間口、接道など)
- 住宅用地の軽減特例が適用されているか
1と2は後述しますが、3については納税通知書に記載してある「評価額」と「課税標準額」の数値がつぎのように1/6になっていれば正しく適用されている(200㎡以下の部分)ことになります。
もし、課税標準額が1/6になっていなければ納税通知書に記載してある固定資産税の担当窓口まで連絡して確認してください。
200㎡以上の土地であれば、つぎのように200㎡を境目に軽減率が変わりますから、単純に1/6にはなりませんのでご注意を(課税標準額の表示は、1/6と1/3を合算した数値が納税通知書に同封されている課税明細書に記載されています)。
- 固定資産税の軽減
200㎡以下の部分(小規模住宅用地)
→ 課税標準の6分の1に軽減
200㎡超の部分(一般住宅用地)
→ 課税標準の3分の1に軽減
実例として、2019年4月に沖縄県宜野湾市で住宅用地に係る課税標準額の軽減特例が正しく適用されておらず、524名の固定資産税を過大又は過少に徴収していたことが発覚しています。
つづいて家屋ではつぎの3点
- 評価額が正しく計算されているか(評価内容は適切か)
- 家屋を滅失(取り壊し)した場合は反映されているか
- 増築・減築等(床面積の増減)は反映されているか
1は後述しますが、2と3は課税明細書に所有している物件が記載されているため、取り壊した家屋が除かれているか、減築した物件の床面積が減っているかを確認してください。
ちなみに、新築家屋の場合は基本的に新築から3年間は新築減額が適用され、固定資産税(都市計画税は適用なし)が1/2に減額されます。
イメージは上記のとおりで、こちらも課税明細書で固定資産税額が1/2になっているか計算し確認することができますよ。
新築減額の課税ミスとしては、例えば2018年12月に佐賀県伊万里市が家屋に対する固定資産税について、752棟分に誤りがありました。
内容は、担当職員が事務処理を誤り、合計482万円を過大に課税。
担当の税務課によると、家屋の評価額を決める基準表の変更ミスとコンピューターへの入力ミス、更にチェックも不十分だったというものです。
職員さんも事務に追われ大変だったかもしれませんが、言い訳にはなりませんし税金に対する信頼が揺らぎますよね…。
ひつじん
その上で、次のステップに進みましょう。
窓口で評価内容の説明を受ける
納税通知書と課税明細書で課税の内容を確認した後は、課税ミスの多い評価の内容を確認しましょう。
土地ではつぎの2点
- 現況地目はあっているか(宅地、田、畑など使用実態の種類)
- 補正項目は正しいか(がけ地、間口、接道など)
家屋ではつぎの1点
- 評価額が正しく計算されているか(評価内容は適切か)
評価の内容を確認するためには、納税通知書に記載されている固定資産税の担当部署へ出向き、窓口で説明を聴いて確認することをおすすめします。
土地と家屋、特に家屋は、評価項目が細分化されており、市区町村が保管している評価資料を見せてもらいながら確認しないと正確なことは分かりません。
ちなみに、市区町村が評価資料を保管する法律根拠(地方税法)はつぎのとおりですから、万が一評価資料がないと言われても、下記法律を示してあげてください。
(固定資産課税台帳等の備付け)
第三百八十条
3 市町村は、第一項の固定資産課税台帳のほか、当該市町村の条例の定めるところによつて、地籍図、土地使用図、土壌分類図、家屋見取図、固定資産売買記録簿その他固定資産の評価に関して必要な資料を備えて逐次これを整えなければならない。
また、窓口で評価内容を確認する人は少数派ですから、市区町村の担当者もしっかり構えてくれますよ。
窓口に行く前の準備事項
- 事前に連絡しアポイントを取る
→「評価の内容を窓口で直接確認したい」旨伝える
→市区町村の担当者でも評価内容の説明には事前準備が必要
→訪問した際に既に課税ミスを見つけてくれている場合もあり時間の短縮になる - 家屋の図面、仕様書を確認
→家屋に使用されている資材を眺める程度で構いませんから見ておいてください
→屋根が瓦なのかスレートなのか、床がフローリング、畳、壁紙はクロス以外にタイルもあるのか程度で大丈夫です
当日の窓口では、土地と家屋について「評価内容について詳しく知りたいので一通り説明して欲しい」と尋ねてください(納税通知書も同封書類と一緒に持っていく)。
土地の評価について
土地については、地目や補正項目について現況を確認され根拠を示されます。
地目は、一番オーソドックスなのは「宅地」です。戸建て住宅やマンションであれば「宅地」で問題ないです。
問題なのは、相続で土地を受け継いだ場合に、その土地が遠方にあると現況は把握できていないことが多いです。
そうすると、現況地目が「田」(田んぼのこと)なのに「宅地」で評価されているなんてことも起こっています(宅地より田の方が評価が低いため、この場合は減額となる)。
補正項目では、一番減額に繋がりやすいのが「がけ地」補正です。
土地の中にがけ地が含まれている場合は、がけの「方位」や「面積(割合)」で補正率が決まりますが、そもそも補正が適用されていないケース多く散見されます。
さらに、「不整形地」補正も登場頻度が高く、減額率が大きいです(最大で40%程度減額)。
これは、形が悪い土地に対する補正項目です。
正方形よりも細長い長方形や台形など歪みが大きい土地ほど利用しにくい傾向にあるため、評価が低くなるのはお分かりいただけると思います。
そのほかにも、間口や奥行きなどの補正項目がありますから、適用漏れの補正項目がないか説明してもらい確認しましょう。
家屋の評価について
まずは、家屋の構造や階層、床面積などの基本的な項目について説明を聴き確認しましょう。
特に「構造」については、間違いがあると影響が大きいです。
具体的には、戸建てなら「木造」なのに「軽量鉄骨造」で評価されていたり、マンションなら「鉄筋コンクリート造(RC)」なのに「鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC)」で評価されていたりといった具合です。
これは、構造ごとに評価の点数が大きく異なり、今あげた事例どおりに評価されていたとしたら、過大評価され税金を過払いしている状態といえます。
実際に、2017年9月に千葉県印西市では、「鉄骨造(S)」の家屋について「鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC)」で評価し、約10年分で3億550万円の過払いが発覚し還付されることとなりました。
基本的な項目の確認後は、家の部位ごと(屋根、外壁、床など)に使用している資材と評価している項目の整合性(使用資材と採用している評価項目が正しいか)と建築設備(電気設備、ガス設備、給湯器、床暖房、トイレ、ユニットバスなど)の有無を示されます。
家の部位ごとに細かい項目が設定されており、補正項目も土地よりもはるかに多いですから、ひとつずつ説明を受けましょう。
もし、資材名や評価の項目が分からなければ、持参した家屋の仕様書なども活用し相手にも確認してもらいながら聴いてください。
税金という大事な説明ですし、素人に分かりやすく説明する義務は市区町村側にありますので、遠慮なく聴きましょう(遠慮すると損する可能性が高まりますし、難しい税金の話は分からなくて当然なのです)。
ちなみに、評価資料は請求すれば写しを持ち帰ることができますから、説明を受けた後に自宅で再確認することもできますよ(問い合わせは無料ですから、気の済むまでいくらでもしましょう)。
ひつじん
ここからは、評価内容に疑義や相違があった場合についてです。
課税ミスの修正による税金の増減を確認
相違があった場合、評価内容を修正すると税額が上がるのか下がるのかを計算してもらい確認しましょう。
税金の算出は基本的にシステム化されており、正しい評価内容を入力すれば税額を再計算することはそう難しいことではありません。
その場で提示されないかもしれませんが、後日連絡をもらうことで対応できます。
そして、結果により対応は分かれます
- 税額が下がる場合
→いくらの差額になるのかをしっかり確認し修正をお願いしましょう
→いつから還付になるのかも併せて確認しましょう(後述します)
→税額を修正した納税通知書が届くことになりますので正しい税額で納付します - 税額が上がる場合
→残念な結果ですが、内容だけ聞き修正は望まない旨を伝えてください!
→意外かもしれませんが納税者からの問合せがきっかけの場合、積極的に増額修正をすることは稀なため、潔く引き下がることがポイントです(意外と知られていないテクニックです。評価の修正依頼をしに来たのではなく内容の確認が目的ですからね。それでも強引に修正を迫られた場合は、自己責任でお願いします。)
市区町村が増額修正するのは、例えば、課税の根拠となる評価額を算定する過程で、電算システム上の「補正率」の入力漏れなどがあり、数百~数千件くらいの大きな影響が出る時です(市区町村からの連絡がきっかけで修正されます)。
つづいて、税金が下がる場合には、いつまで遡って税金が返ってくるのか確認する必要があります。
課税ミスの修正をした場合いつまで遡って税金が返ってくるのか
いざ税金が返ってくとなった際に一番気になるのは、いつから返却となるのかですよね。
結論は、地方税法により5年まで遡りが可能です。
第十一節 更正、決定等の期間制限及び消滅時効
第一款 更正、決定等の期間制限
(更正、決定等の期間制限)
第十七条の五 更正又は決定は、法定納期限(随時に課する地方税については、その地方税を課することができることとなつた日。以下この条及び第十八条第一項において同じ。)の翌日から起算して五年を経過した日以後においては、することができない。加算金の決定をすることができる期間についても、また同様とする。
2 前項の規定により更正をすることができないこととなる日前六月以内にされた第二十条の九の三第一項の規定による更正の請求に係る更正は、前項の規定にかかわらず、当該更正の請求があつた日から六月を経過する日まで、することができる。当該更正に伴う加算金の決定をすることができる期間についても、同様とする。
3 賦課決定は、法定納期限の翌日から起算して三年を経過した日以後においては、することができない。
4 地方税の課税標準又は税額を減少させる賦課決定は、前項の規定にかかわらず、法定納期限の翌日から起算して五年を経過する日まですることができる。
5 不動産取得税、固定資産税又は都市計画税に係る賦課決定は、前二項の規定にかかわらず、法定納期限の翌日から起算して五年を経過した日以後においては、することができない。
原則は5年分の税金と還付加算金(過払い金にあたるため利息)が返ってきます。
ただし、 最長何年かは各市区町村によって差があり、例えば東京都の場合は最長20年の還付が可能です。
これは、地方税法第417条の「重大な錯誤(手抜きに値するミス)」に該当するケースだと、裁判となり重大性・明白性が認められれば国家賠償請求にまで至ってしまう可能性があることと、実際に平成22年の冷凍倉庫の最高裁判例で20年遡っての国家賠償が認められたため、裁判を経ずとも還付手続きにより救済しようということです。
さいごに、納税通知書に記載してある「審査申出」と「審査請求」(不服の申立て)についてみていきましょう。
不服の申立てについて
固定資産税の窓口で評価の内容を確認する方法をお伝えしましたが、税金や行政機関の決定事項には、基本的に不服申立ての制度があります。
固定資産税にもその制度があり、「審査申出」・「審査請求」と呼ばれています。
審査申出
審査申出は、固定資産課税台帳の登録価格に不服がある場合(評価の内容など)に、市区町村の担当部署とは異なる第三者機関の「固定資産評価審査委員会」に対して修正を求める手続きのことをいいます。
原則として、納税通知書の交付を受けた日から、3月以内(4月に届くため7月中旬が目安)で、しかも3年に一度しかできません。
審査請求
審査請求は、価格以外の点に不服がある場合(住宅用地の特例措置が適用されていないなど)は3年に一度ではなく毎年できます。
窓口での評価の確認と「審査申出」・「審査請求」の関係ですが、課税に誤りがあったり、評価に疑義がある場合は、まず窓口で評価の内容の確認を行います。
そこで話がまとまらない場合に、内容に応じて「審査申出」・「審査請求」の手続きに移行するということです。
どちらも裁判の一歩前の段階。
「審査申出」・「審査請求」の決定内容に不服がある場合は、提訴し裁判で争うということになります(逆に言うと、「審査申出」・「審査請求」を経ずにいきなり提訴は出来ません)。
固定資産税を取り戻そう!固定資産税が高いと感じる場合は課税ミスで払い過ぎているかもしれない!のまとめ
いかがだったでしょうか。
普段何気なく支払っている固定資産税・都市計画税について、思いのほか課税ミスが多く、窓口で評価を確認できることを知ることができたのではないでしょうか。
そして、市区町村からの税金の通知だから、よく分からないけど取り敢えず支払うというのは危険だということがお分かりいただけたと思います。
あなたの大切なお金を納税するのですから、間違いないか確認し納得してから支払いたいですよね!!
ひつじん
それでは、さいごまでご覧いただきありがとうございました♪
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次回の記事でお会いしましょう!